きみに触れられない
「きっとミサは不安なんでしょ?

ずっとずっと目指してきたけど、だからこそ『これで本当に良かったのかな?』って不安になってしまった。

違う?」


目の前が明るくなっていくような感覚だった。

言いたかった気持ちが、言えなかった思いまでもが、綾芽ちゃんの言葉に言い表されていく。


……伝わった。

吐き出した思いも、自分でさえ言葉にできなかった思いも。


「もしかしたら本当に後悔する日がくるかもしれない。

でも、今考えてる将来の夢だけがミサの人生じゃないでしょ?」


それから綾芽ちゃんは私の手を握った。


「後悔したらその時考えればいい。

こんなのやめたいって思ったら、そのときにやめればいい。


何度だって変えれる。

あたしらの未来なんだから」


その言葉は希望で満ちていて。

優しくて、温かい。

私の心まで照らしてくれた。


私はその手を握り返した。


私たちの未来。

何度だって変えれる、私たちの未来。


遠くで揺れていて、確かなものなんてなにもないけれど。

不安なことだらけで、荒れ果てた荒野と同じように思っていたけど。


もっと明るいものだと。

もっと優しいものだと。


少し信じられるかもしれないと思った。


そこでふと思い出した、ハルの存在。


__ハルに、たくさん酷いことを言ってしまった。


すごく、ひどいことを言った。


きっと傷つけた。


__ハル。


私は手を離して立ち上がった。
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