きみに触れられない
「ミサ?」

綾芽ちゃんは不思議そうな顔をする。


「ごめん、私……行かなきゃ」

「ミサ!?」


戸惑う綾芽ちゃんをそのままに、私は階段を上った。



__ハル。


ハルに会わなきゃ。



一段飛ばしで階段を駆け上る。


日頃の運動不足か、息が上がる。


それすらも構わず、扉を開けた。


悲鳴のような金属のこすれる音と共に、光が溢れた。

眩しくて思わず目を細める。


ハル、どこにいるんだろう。


眩しさの中でハルを探した。


やがて目が慣れていくと、頭上には突き抜ける青が広がっていた。


屋上に踏み出して、左右を見渡す。


「ハル、ハル?」


呼びかける。


見つけたい。


見つけたいのと同じくらいに、ハルに会うのが怖い。


きっとハルとは友達じゃなくなった。


あんなに傷つけるような言葉を投げかけたんだ、友達でいられるはずがない。


思い出すだけで、胸が痛くなる。


自分が言った言葉なのに、否、だからこそ。


感情的な言葉で、八つ当たりをするみたいにハルを傷つけた。


自分が、いちばん許せない。


同時に悲しくてしかたがない。


ハルとせっかく友達になれたのに、それを自分から壊したこと。


悲しくて、悔しくて、たまらない。
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