きみに触れられない
「ハル!」


叫んだ声は空に響く。


ああ、ほら、やっぱり。


名前を呼んでもでてきてくれない。

辺りを見渡しても姿が見えない。


私がハルを傷つけた。

友達じゃなくなったんだ。


私が、私が壊したんだ、自分から。


私は崩れるように座り込んだ。

そして膝を丸めて体育座りをした。


あんなに嬉しかったのに。

初めてできた友達なのに。


ハルのくしゃりと笑う笑顔がもう見れないのかと思うと悔しくて、悲しくて、私は目元を膝に押し付けた。


ハル。


ハル。


あんなに緊張せずに話せる人、初めてだったのに。

ハルと話すことが楽しみで、屋上に通っていたのに。


ハルの言葉のおかげで、私はまた友達をつくれたのに。


ハルは、たくさんのことを私にくれたのに。


私は、壊した。

ハルとの関係を、感謝の気持ちすら伝えずに、壊した。


壊したくなんてなかったのに。


想えば想うほど、ハルの笑顔を思い出してどうしようもなく胸が苦しかった。


すると後ろから声が聞こえた。


「どうしたの?」


その声ではっと顔をあげる。


ゆっくりと振り返ると、また私の涙腺は緩んだ。


視界が滲んでいく。

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