きみに触れられない
「は、る」

「どうしたの、そんなに泣いて」


ハルは慌てて私の隣に来た。


「ハル」


ハルは何も言わずに私の隣に座った。


ああ、いつも。

ハルは私の隣にいてくれるね。

無理に何があったか聞き出すんじゃなくて、私が話すまで待っていてくれるんだ。


その優しさがどれだけ嬉しかったか、きっと言葉じゃ言い表せない。


「ごめんね、ごめんね、ハル」


言葉にした途端、また涙が溢れた。

流れ落ちるそれを腕でごしごし拭う。


「たくさん傷つける言葉を投げた。

たくさん傷つけて、きっと嫌われたし、もう友達じゃないかもしれない。

きっとたくさん謝っても謝り切れないけど、それでも言わせてほしいの。

本当に、本当に、ごめんなさい」


私はハルの方を向いて頭を下げた。


『きっと嫌われたし、もう友達じゃないかもしれない』


自分が言った言葉に泣きそうになった。


「…え?それで泣いてたの?」


ハルは予想外の反応をした。

顔をあげると、ハルはすごく驚いた顔をしていた。

目を見開いて固まっている。


私が頷けば、ハルは溜息を吐いて微笑んだ。


「俺のことくらいで泣かないでよ」


眉を下げて柔らかく微笑むその笑顔があまりに優しくて、また涙が溢れた。
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