きみに触れられない
「でも…!」

言いかけた私の言葉をハルが遮る。


「あのさ、俺、本当になーんにも傷ついてないんだけど?」


みーちゃんの考えすぎ、なんて笑う。


「でも、だって…!八つ当たりしたし…!」


するとハルは驚いた様子で「ああ、あれ、八つ当たりなんだ」とのんきな口調で言う。


「俺、『みーちゃん今日テンション高いなあ、いつもよりしゃべるなあ、ってかみーちゃんやっぱ可愛いなあ』としか思ってなかったんだけど?」


にこっと微笑まれるけど、言葉を理解するのに時間がかかった。


「へっ?」


「むしろ嬉しかったよ。

これまで人と話したことがなかったみーちゃんが、あんなにたくさん話してくれて。

それくらい仲良くなれたのかなって思うと、すごく嬉しかった」


目を見開いて固まる。


「もっと仲良くなりたいって思った」


その言葉に、あたたかな響きに、涙が頬を伝う。


「また、泣いてる」


ハルは困ったように眉を下げる。

穏やかな、穏やかな微笑みだった。


「だって!」


私は涙ながらに反論した。
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