きみに触れられない
「ハルを傷つけて、もう友達じゃなくなったんだって思ったの…!

ハルと友達じゃなくなったんだって思ったら、悲しくて、辛かったのに…!」


涙で言葉がつまる私を見てハルは穏やかな顔をしながら言った。


「友達だよ」


凛とした言葉。

優しい言葉。


「俺たちは、友達だよ」


希望にあふれた、明日を照らす言葉。


私は声を上げて泣いた。


「そんな、泣くほど嬉しいの?」


ハルは少しからかうように言ったけど、私は素直に頷いた。


「…だって、初めてできた友達だもん」


少し涙も落ち着いた私を見たハルは「今日は素直だね」なんて笑う。


「そんなに俺のこと好きなの?」


ニヤニヤした笑顔。

大っ嫌いな笑顔。


「っ、調子に乗らないで!」


私が叫ぶと、ハハ、とハルは笑った。


「うん、分かってる」


ヘラヘラ笑うその顔は、どこか少し寂しそうにも見えた。

目の錯覚かもしれないけれど。


それから私は何か言う気にもなれなくて、そのまま街を眺めた。
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