きみに触れられない
「だけど先輩、高校入って最初の大きな試合で優勝した後__」


カナは眉をひそめて苦しそうな表情をした。

少し口をつぐんで、それからまた話しだした。


「__子どもを庇って交通事故に遭ったんだ」


ドン、と心臓が痛いくらいに鼓動した。

衝撃。

言葉の重み。

体が凍りつくような感覚だった。


「そ、その先輩、もしかして……」


しかしカナは首を横に振った。


「生きてる。今も、生きてる」


その言葉を聞いて少しほっとした。

しかしカナの顔は暗いままだ。


「でも、眠ってるんだ、ずっと」


『眠ってるんだ、ずっと』

その言葉に引っ掛かった。


「そ、それって…!」


はたと思い当たった。


生きてるけど、ずっと眠ってる。

その状況の人の話は、普段からよく聞いている。


私が何を考えたか分かったカナは頷いた。


「先輩、あの日から昏睡状態なんだ」


私は目を見開いた。


__まさかと思った。

お父さんがよく話してくれるのと同じような話だから、そう考えてしまうんじゃないかと思った。

まさか的中してしまうなんて。


「昨日、お見舞いに行ったんだ。先輩のいる病院に、久々に、キャプテン達とみんなで」


それで私は昨日カナがキャプテンさんに呼ばれた理由が分かった。
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