きみに触れられない
「行こうよ!」


うきうきした顔の綾芽ちゃん。

綾芽ちゃんと花火大会には行きたいような、でも人混みは好きじゃないから行きたくないような。

どっちつかずの思い出悩んでいると、綾芽ちゃんは「あ、塩谷くん!」とカナに声をかけた。


「おはよう、川島さん。なんか楽しそうだけどどうしたんだ?」


カナはいつもの笑顔だった。

悩みを隠しているわけじゃなくて、すっきりとしたような笑顔だった。


『カナ、勝ってよ』


多少、役に立ったのだろうか。

いや、そんなことを考えること自体おこがましいのでは。

そうだ。カナは練習をして、それで仲間うちで__。


「ねえ、塩谷くんも一緒に行かない?」


その声で我に返る。

綾芽ちゃんがカナを祀りに誘っていたのだ。


「え、俺?」

カナは驚いて目を見開くと自分を指さした。


「そう!さっき、ミサも誘ったところなんだ」


とっても楽しそうな顔をする綾芽ちゃん。

元気で快活で、そういうところは憧れるのだけれど。

あまりにも速く展開されていくこの流れに、頭がついていかない。

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