きみに触れられない
「え、米山さん祭りに行くの?」
カナは私が行くかもしれないということにとても驚いているようだった。
それもそのはず。
友達さえいない私が、人混みを得意とするわけがなく。
幼い頃から人混みが嫌いで、カナの家族と一緒にお祭りに行った時には、はぐれないようにぎゅっとカナの腕を掴んで俯いてただ歩いていた。
__カナはそんな昔のことを、覚えてくれていたんだ。
「行きたいな、と思う」
私は小声で、けれど意志を持って答えた。
行ってみたい。
人混みは嫌だけど、友達と、綾芽ちゃんと行ってみたい。
「へえ、すごいな。米山さんがそんなことを考えるなんて」
カナは珍しいものを見るような顔をした。
__そりゃあ、私だって、友達と一緒にお祭りくらい行ってみたいですよ。
言いかけた言葉をぐっと飲みこんだ。
「じゃあ俺も行こうかな」
カナはそう言った。
「女の子2人の邪魔をするような感じになっちゃうかもしれないけど」
カナが自虐的に笑うのを、私と綾芽ちゃんは首を振った。
「誘ったのはこっちだから」
「いてくれると、助かる」
私の言葉に、2人が笑った。
「いてくれると助かるって、何」
「やっぱミサ面白い。サイコー」
お腹を抱えて笑う2人のツボが分からない。