きみに触れられない
「そんな重要な話しじゃないんだけどね」

そう言って笑いながら綾芽ちゃんは話を始めた。


「この前は驚いたよ。

ミサと塩谷君、小学校からずっとクラスおんなじだったなんて」

奇跡だよ、なんて綾芽ちゃんは笑う。


「ああ、うん…びっくりだよね」

私は笑って見せた。


本当にびっくりしたのは、カナとずっと同じクラスになれたことじゃない。

カナと付き合っているんじゃないかといちばん恐れていた話がクラス中に広まったこと、クラス中から注目を浴びるという、ずっと避けてきた事態が起こってしまったこと。


「でも、本当に仲良いよね」

綾芽ちゃんは目を細めた。


「え、そうかな?」

何を言われるのかとドキドキしながら、私は答えた。


私とカナは幼なじみで、仲も良い。

けれど、仲が良いことがバレて騒がれるのが嫌だからと、カナにはわざと私のことを『ミサ』ではなく『米山さん』と呼んでもらっていた。

なのに、仲が良いと思われたなんて。

確かにカナは『俺らめっちゃ仲良いから』とふざけてくれたけど。


ああ、思考はすごい速度で回り続けるけど、解決策は見出さない。

冷汗が背中を伝っていく。


「そうだよ」

興奮気味に頷く綾芽ちゃんは更に言葉を続けた。

「ミサと塩谷君は幼なじみってやつなんでしょ?」

「そ、うだね」
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