きみに触れられない
すると綾芽ちゃんは「いいなあ」と羨ましそうな顔をした。

「塩谷君が幼なじみだったら、楽しいだろうなあ」

細められたその瞳には、羨望の色が見えた。

「でも、あんなにカッコイイ幼なじみだったら、色々大変なんじゃない?」

「え?」

「例えば、塩谷君が好きな女の子から嫉妬されたり、とか」

私は首を横に振った。

「私とカ…塩谷君が幼なじみだってこと、今までばれなかったから」

そう笑うと、綾芽ちゃんは驚いた。

「えっ、本当に?今まで一度も?」

頷いた私を見て、綾芽ちゃんは「よくばれなかったね」と言った。

「本当だよね」

本当は、幼なじみだってことがばれないようにカナに頼み込んだり色々と工夫して必死に隠してきたんだけどね。

だけどそんなことは綾芽ちゃんに言えるはずもなく、私はただ薄く笑っていた。

「バレたら大変だろうね。塩谷君の彼女がミサに嫉妬したりとか」

「それは勘弁してほしいね」

私達は笑い合った。

「そんなことはなかったの?」

「まず幼なじみだってバレていないし、それに塩谷君、今まで一度も彼女いたことないから」

すると綾芽ちゃんは目を見開いてまん丸にした。

「えっ、塩谷君、彼女いないの?」

「えっ、うん、そうみたいだよ?」

綾芽ちゃんの驚き方に驚きつつも、私は答えた。

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