きみに触れられない
ハルは私の隣に座ってため息を吐いた。

「なんで幼なじみクンのこと好きなのかって聞かれたときに、そうだよって言わなかったの?」

「え…見てたの?」

するとハルは「うん、最初から」と言った。

「全然分かんなかった…」

「そりゃあ、そうでしょ」

ハルは少し笑ってそれから「みーちゃんが友達といたからね」と付け加えた。

「モテるね、幼なじみクン」

ハルの言葉に私は頷いた。

「ずっと昔からね、あいつはモテるんだよ。だから、慣れてるはずなんだけど…」

私が俯くと、ハルは「でも、ショックなんだ」と私の気持ちを代弁してくれた。

私は頷いた。

するとハルは溜息を吐きながら「そりゃあ、そうだろうね」と言った。


「みーちゃん、幼なじみクンのことが好きなんでしょ?」


私は顔をあげてハルを見た。

ハルは真っ直ぐな目で__いつもヘラヘラ笑う時とは違う真剣な目で、私を見ていた。

私は違うと言おうとしたけど、何も言えなかった。

そのまなざしが、あまりに強くて、少し哀しそうだった。

私が何も反論しないことを、肯定とみなしたハルは「だったらあの時友達を遮ってでも『私も好きなんだ』っていえば良かったのに」と言った。

私は「むりだよ、そんなこと」と反論した。
< 124 / 274 >

この作品をシェア

pagetop