きみに触れられない
「かき氷屋、すっごく人並んでてさ」

綾芽ちゃんの手にはかき氷。

「それ、みぞれ?」

氷の色は白色だった。

「ううん、カルピス」

綾芽ちゃんは嬉しそうに言った。

「かき氷のカルピス味がすごく好きなんだけど、カルピス味おいてるところなかなかなくて」

思わず買っちゃった、と綾芽ちゃんは笑った。

「あれ、ミサ、いちご飴買ったの?」

思わず言葉が詰まった。


「塩谷君が買ってくれて…」

ちらりとカナの方を見ると、カナはさっそくから揚げを食べていた。


「から揚げ買おうと思ったら、となりでいちご飴売ってたんだ」

「へえ、そうなんだ。から揚げもおいしそうだね」

「ああ。そこの店で売ってた。ちょっとピリ辛だけど」

「ピリ辛?へえ、珍しい」

「思わず買ってしまった」


盛り上がる2人。

会話に入れずに、私は2人の後ろを歩くことにした。


私は一口飴にかじりついた。

その瞬間広がる甘い香り。

安っぽくて、だけど懐かしい味。


「花火を見る場所探そっか」と綾芽ちゃんが振り返る。

「あ、うん」

私は少し遅れて返事しながら、カランカランと下駄音を響かせて歩いた。

息をするだけで胸は少し苦しかった。
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