きみに触れられない

心臓まで震わせる花火の音が心地よくて、思わず声が溢れた。


「__私の方が、ずっと」


ずっと、一緒にいたのに。

ずっと、仲良しだと思っていたのに。


カナが、遠くへ行ってしまう。

綾芽ちゃんのところに行ってしまう。


私の手の届かない場所へ、私が触れられない場所へ。


それがすごく寂しかった。

すごく、切なかった。


カナのことを恋愛対象として好きなのかどうかは分からない。

もう、ぐちゃぐちゃで分からない。

それでも、寂しいって気持ちだけは確かに胸にあった。


__お願い。


どうか置いていかないで。

そばにいて。


いつものように笑ってよ。


『ミサ』


白い歯を見せて笑う、快活で爽やかな笑顔で。



カナの笑顔を必死で思い出して、すがろうとする。

進もうとするカナを引き留めようとしている。


カナが進むことがきっと彼の幸せへの近道だと分かっているのに。

弱くて、意地汚くて、私は本当にどうしようもない。

どうしようもないことも、分かってるのに。

それなのに、私は、どうしてこんなに。


寂しくて、悔しくて、みっともなくて。


私なんて、大っ嫌いだ。


逃げるようにぎゅっと目を閉じたその時だった。


「そばにいたいなら、そばにいれば良かったのに」
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