きみに触れられない
「で、どうしたんだよ。何か困ってるのか?」
カナは溜め息を吐きながら、それもそうだよな、と独り言を続ける。
「まあ、そうだよな。大事なことだし、米山さんならどこだって行けるんだろうし、難関だって余裕で突破しちゃうんだろうな」
__バン、と机に手をついて立ち上がる。
大きな音が教室に響く。
「よ、よねやまさ__」
「何が、『誰より分かってるつもり』よ」
私は弁当箱をしまうと教室を飛び出した。
もう、もう、全部、全部、嫌だ。
大嫌いだ。
クラスメイトも、カナも、何より自分がいちばん嫌いだ。
何もかも大嫌いだ。
この現状も、期待も、不安も、全部、全部。
嫌いになるくらい、辛くて、苦しくて。
抜け出したくて、逃げ出したくて、無意識に体が向かったのは、屋上だった。