きみに触れられない

「そうすれば幼なじみクンは幸せだし、みーちゃんから離れない。だからみーちゃんも幸せ。

それでいいんじゃないの?」

私は首を横に振った。


__ああ、どうしてハルは分かってくれない?


「そんなこと……っ」


そんなこと、叶わないって分かってるから、こんなに苦しいのに。


「叶わないって、どうして?」

ハルが尋ねる。


「どうして、そんなこと言うの?」


心なしかハルの声は震えているようにも聞こえた。

打ち上がる花火の光に照らされたハルの顔は、ひどく哀しそうだった。


どうしてハルが、そんな顔をするの。


「だって、分かり切ってることでしょ」


私は吐き捨てるように、ハルから視線を逸らした。

夏色の光に照らされた顔がハルに見られないように俯いた。


「綾芽ちゃんに敵うはずがない」


自分で言った言葉に、胸がずんと苦しくなった。


綾芽ちゃんに敵うところなんて、あるはずがない。

誰にでも優しくて、明るくて、一緒にいるだけで楽しい。

そんな人に惹かれないわけがない。

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