きみに触れられない
「それに、綾芽ちゃんといた方が、カナも幸せになれる」
いつも笑顔が絶えない綾芽ちゃんと、いつも暗い顔をしている私。
そんなの私といるよりずっとカナは幸せになれるに決まっている。
夏色に照らされてゆく地面がなぜだか滲んで見えた。
どうしたんだろうと思っていると、涙がこぼれたからだと分かった。
「どうして……」
今更、涙なんて溢れてくるのだろう。
自分でも、もう、訳が分からなかった。
「みーちゃんは」
ハルが大きな声で言った。
「みーちゃんは、きっと、悲しいんだよ」
その声でハッと顔を上げた。
ハルが私をまっすぐに見ていた。
その顔は花火の光が反射していて、時折鮮明に見えた。