きみに触れられない
だから憧れと言われたことに驚いた。

こんなあたしを、ミサが憧れてくれていたなんて、思いもしなかった。

寧ろあたしの方がずっと憧れていた。

憧れて、たまに妬んでしまうこともあるくらいに。

それにすごく優しい人だって分かった。

考えすぎなくらい、人のことを考えて。

ますます、憧れた。

その真っ直ぐさに、純粋さに、優しさに。


ミサみたいになりたいと思った。


彼女と接するようになって、だんだん彼女を知っていって、分からないこともたくさんあった。


ミサは昼休み、お弁当を持ってどこかへ行く。


これが最大の謎だった。

どこで食べたってミサの自由だけど、やっぱりちょっと気になる。


ミサは誰とどこでお弁当を食べているのだろう。


ミサの友達は、あたしと塩谷君だけ。

部活にも所属していないらしいし、知り合いも多いとは思えない。


まさかひとりで、お弁当を食べているの?

それもそれでいいかもしれないけど、毎日それじゃあ寂しくない?


教室のベランダから中庭を見降ろすけれど、ミサの姿は見えない。


謎は更に深まるばかり。


そこであたしはこっそりミサの後ろを追いかけることにした。
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