きみに触れられない
あれ、ミサ、どこいった?


「なあ、ミ…米山さんどっかいった?」

近くのやつに聞いてみるけど知らないと首を横に振られた。

「米山さんに何か用事あるのか?」

ニヤニヤした表情を浮かべるやつに「別に何もないけど」と素知らぬ顔をした。

俺とミサが幼なじみだということは、ずっと伏せてきた。

ミサがそうして欲しいと望んだから。

まあ、幼なじみだとバレたら好奇の目にさらされたり、色々あることないこと言われたり、ミサが嫌な思いをするだろうことは簡単に予測がつく。

ミサにこれ以上嫌な思いをしてほしくないし、俺もクラスの中では「米山さん」と呼んで、普通のクラスメイトと同じように接してきた。

ミサには幸せになってほしいから。


というか、ミサ、本当にどこにいった?

ミサが行きそうなのは、図書館か職員室くらいか。


__ああ、そうだ、屋上。


この前、ミサが授業に遅れてきた。

屋上に行っていたとミサは言ったが、明らかに可笑しかった。

ミサは授業に遅れてくるようなやつじゃない。

ミサは絶対にサボったりなんかしない。

いつも10分前には目的地に着くように計算して動くやつだ。

おまけに嘘をつけないやつだ。

だからあの時誤魔化した。


『ごめんね、大丈夫だから』


あいつは誤魔化したつもりかもしれないが、誤魔化しきれていない。

絶対何かあったんだ。
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