きみに触れられない
__もしかして、彼氏でもできたか?


そんな考えがふっと過って、胸がざわついた。


__いや、ミサに限ってそんなことはない。

ミサは真面目なやつだ。

簡単に押しに負けたりはしないだろう。


そう思う一方で、ざわざわと心が落ち着かない。

寧ろ、焦る気持ちが大きくなるばかりだ。


焦る心を落ち着けることもできず、俺はそのまま屋上へと向かった。


屋上へ続く階段まで来ると、そこには予想外の人物がいた。


「川島さん?」


ミサと友達の川島さんがいた。


「あ…塩谷君」


川島さんは珍しく階段に座りこんで、すこし悩んでいるような顔をしていた。


「どうした?」


そう声をかけると、「ミサが…」と川島さんは言葉をこぼした。

「ミサ?米山さんがどうしたんだ?」

平常心を保てないまま尋ねてしまった。

しかし川島さんはそんなことに気づく様子がなく、ただ「分からない」と言っていた。


「ミサが分からない。

ただ、あたしの目が可笑しいだけかもしれない。

でも、それは考えにくいし。

ミサ、どうしちゃったんだろう?」


川島さんの言っている意味がさっぱり分からなかった。
< 150 / 274 >

この作品をシェア

pagetop