きみに触れられない

異変、きみとの日々



朝、いつもと同じように学校に来ると、カナと綾芽ちゃんに取り囲まれた。


「お、おはよう、2人とも」


笑顔を引きつらせてあいさつすると、2人は不機嫌そうに「おはよう」と返してくれた。


「昨日、花火が打ちあがっている間、どこにいっていた?」


カナは低い声でそう尋ねた。

…これは、相当怒っているらしい。


「気が付いたらミサがいなくなってて二人で必死に探したんだよ?」

「花火が打ちあがっている間に屋台に買いにいったらそりゃ人混みがすごすぎて帰ってこれねぇことくらい分かるだろ。あと連絡は」


私は笑って「ごめんね」と謝った。


2人から離れている間、私はカナにメールで「今屋台に買いものに行ったんだけど人がすごすぎて帰れないから、一人で見ているね」と伝えた。

2人が私を探さないように嘘をついた。

2人きりでいてほしかったし、私も2人と一緒にいれなかった。

涙を流しているところなんて見られたくなかったから。


「本当に心配したよ?」と綾芽ちゃんが繰り返す。

一体どれだけ心配をかけたのだろうかと想像すると胸が痛くなった。

「本当にごめんね」

謝ると「これからはこんなことしないでよね」と綾芽ちゃんは少し困ったように笑った。

私は笑顔で頷いた。

「まあ、無事でよかったけど」とカナはため息を吐いて席についてしまった。


そこでちょうどチャイムが鳴り響いて、担任が入ってきた。

綾芽ちゃんも席に戻り、いつもの朝が始まった。

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