きみに触れられない
それから紙に書かれた内容に目を通した。

私の書いた文字に真っ直ぐな目を向けられていて、すごく緊張する。

ドクン、ドクンと心臓が鼓動する音がいつもより速く感じる。

緊張のせいで手が汗ばんできた。

どこを見ていたら良いのか分からず、先生の斜め後ろの方をじっと見て逸る鼓動に耐えていた。

すると、先生が「いいんじゃない」と明るい声で言った。

その声でようやく先生を見ると、先生は微笑んでいた。


「きっとすごく悩んだのね」


その言葉がすっと胸に落ちてきた。


すごく、悩んだ。

このまま目指していいのか、と。

いつの日かこの選択を後悔したらどうしよう、と。


でも、みんながいてくれたから。

支えてくれたから。

いつか選んだことを後悔するその日まで、諦めないで目指してみようと思った。


「先生はこの選択をすばらしいと思うよ」


その声に、救われた気がした。


あんなに悩んだことも、きっと、無駄じゃなかった。


「何か不安に思うことがあったらいつでも言ってね」


先生は優しく微笑むと教室を後にした。

私は先生の後ろ姿をずっと見ていた。

なんだか涙が溢れてきた。

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