きみに触れられない
昼休み、いつものようにお弁当を持って教室を飛び出した。

__今日もハルはいるだろうか。

約束なんて、していない。

だけどいつも私が屋上に行ったときにはハルはいてくれたから、今日もいてくれるだろうなと思う。

屋上でお弁当を食べること。

それが最近の楽しみだった。

夏になって、屋上は灼熱だ。

暑いのは苦手だし直射日光も得意ではないけれど、それでもハルと会えるのが楽しみでしかたがなかった。

埃っぽくジメジメした階段を駆け上がって、屋上へ続く扉を押し開ける。

光が溢れて、思わず目を細めるけれど、そこには夏の青が広がっていた。

一歩踏み出して、屋上へ出るとうんと背伸びをした。

吹き抜ける風が気持ちがいい。

私はお弁当を食べる場所を探した。

なるべく日陰。それでいて街を見渡せる場所。

そんな好立地を探しているとすぐに見つかった。

そこに座って、お弁当を広げた。

今日もお弁当の中に入っていたプチトマトを口に運ぶ。

美味しい。お母さん、今日も時間がなかっただろうに。

嬉しい。お弁当を食べるたびに、ああ、愛されているなと感じる。

すると後ろから声が聞こえた。


「みーちゃん」


振り返ると案の定、ハルだった。


「ハル!」


今日も、会えた。

それだけで嬉しくて自然と笑顔になる。
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