きみに触れられない
「今日も来たんだね」

「ハルこそ」

「俺はここが好きだからね」とハルは私の横に座った。

「今日はなんだか嬉しそうな顔をしてるね」

「そ、うかな」

ドキッとした。

きっと理由は、ハルと会えたから。

だけどそれを言ってしまったら、それはなんだか私がハルのことを好きだと言っているのと同じように感じられて、言うのがはばかられた。

「きっと、気のせいだよ」

誤魔化そうとしてそう言えば、ハルは「ふうん」と言った。

けれどその表情はニヤニヤした顔をしていて、誤魔化せていないことを実感させられた。

こういう人を小馬鹿にしたようなハルの態度は好きじゃない。

ちょっと拗ねてそっぽをむくと、ハルは慌てて「怒んないでよ」と私をなだめる。

けれどその声や表情は穏やかでどこか余裕があって、これが年上の余裕なのだろうかと思ったら、少し腹が立つ。

「今日はどうだった?授業楽しい?」

ハルの話題に私は頷いた。

「今日は英語の授業があってね__」

先生が描いた犬のイラストが到底生物には見えなかった話をした。

するとハルは肩を揺らして笑った。

くしゃりと笑う、ハルらしい笑顔だった。

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