きみに触れられない
「楽しそうだね」
ハルは笑った。
「うん」
頷けば、ハルはさらに笑顔になった。
「きっと、他に何か嬉しいことあったんでしょ?」
ハルの言葉に驚いて思わず目を見開いた。
「どう、して」
「そんなの、分かるに決まってるよ」
それからぐっと顔を近づけて微笑んだ。
「みーちゃんのことなら、ね」
その言葉は私をバカにしているのか、それとも冗談なのか、はたまた本気なのか、さっぱり分からなかった。
けれどどこか説得力のあるような言葉だった。
不敵の笑みを見せるハルから目を逸らせなかった。
見つめ合って数秒間。
その時間は長かったというよりは、まるで世界が止まったように感じられた。
時間が止まったような感覚だった。
「みーちゃん、可愛い」
その言葉で世界は再び動き出した。
目を細めて笑うハルの言うことはよく分からない。
「バカにしてるの?」
「まさか」
心からそう思うよ、なんてハルは言う。
「顔を真っ赤にしたみーちゃんほど可愛いものってないよ」
けれど笑って言うものだからそれを信用していいのかどうなのか。
からかっているのだろうか、なんて思ってしまう。