きみに触れられない
カナの言っている意味はさっぱり分からない。

けれどカナは嘘をついている顔ではなかった。

本気で心配してくれているときの顔だった。

だから余計に、カナが何を言っているのか分からない。


「違うよ、隣にいてくれたよ?」


ハルは隣にいてくれた。

隣でずっと話を聞いてくれていた。

笑ってくれた。

くしゃりと笑う、ハルらしい笑顔で。

今も簡単に思い出せてしまうくらい、鮮明に残っているのに。


「いや、誰もいなかったぞ」


カナはきっぱりと言う。

綾芽ちゃんは心配そうな瞳で私を見る。


「え?」




「屋上にいたのは、ミサだけだった。


なあ、ミサは誰と話していたんだ?」




その言葉は私に真実だと訴えかける。


私は目を見開いて言葉を失った。


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