きみに触れられない
「ハル!」

バン、と扉を開け放って、青空の下。

空は少しオレンジがかって、だいぶ陽は傾いていた。

西の太陽が眩しい。

目を細めながら、私はハルを探した。


「ハル、ハル!」


息もまともにできないまま、ハルの名前を呼び続ける。


ハルの姿はどこにもいない。


不安で心臓の鼓動は早くなる。


「ハル、ハル!どこなの!ハル!」


返事をしてよ。


叫んだ声はむなしく響く。


耳を澄ましても返事は帰ってこない。


哀しくて、切なくて、私は屋上に座りこんだ。


『誰もいなかったぞ』


ふいにカナの言葉が脳内で響いた。


私は首を横に振った。


「違う」


響く言葉をかき消したくて、叫んだ。


『屋上にいたのは、ミサだけだった』


「違う」


ハルは隣にいてくれた。

私の隣で笑っていた。


『なあ、ミサは誰と話していたんだ?』



「ハル!」



叫んだ言葉は涙の色だった。


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