きみに触れられない
もう、分からない。


「ハル…」


訳が分からない。


私は何を信じたらいい?


何なら信じられる?


カナや綾芽ちゃんは見落としていた?

私の目に映るものが虚像?

ハルと出会って変わったことすら、私のねつ造?


ねえ、何が正解?

何が間違い?


「もう、分かんないよ!」


だれか、教えてよ。


叫んだ声に帰ってきたのはカラスの鳴き声だけだった。

カー、カーとまるで人をバカにするような声は、「知るかよ」とそう言っているようにも聞こえた。

私は俯いた。

悔しくて、苦しくて、溢れた涙は止められなかった。


__もう、何がなんだか分からない。


夢なら覚めてしまえばいい。

ドッキリなら種明かししてしまえばいい。

嘘なら真実を教えてよ。


ねえ、誰か。


ぽたり、ぽたり。

涙は零れ落ちて屋上に水玉模様を描く。


「どうして泣いているの?」


優しい声が聞こえてはっと顔をあげる。

振りかえった先にいたのは、心配そうな顔をするハルだった。


「どうしたの?」


その優しい声が、私を心配する表情が、私の涙腺を破壊する。

言いたいことはたくさんあった。

なのに言葉が詰まって、涙しか出てこなかった。

ハルは私の隣までくるといつものように私の隣に腰を落とした。
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