きみに触れられない
「ハル…っ」

涙が溢れて息もままならないまま言えたのは、たったそれだけだった。

「ん?」

ハルは優しい声で、穏やかな表情で、私を見つめた。

息も、胸も、苦しい。


「ハルは、ここにいるよね?

今、ここに、存在しているよね?」


するとハルは一瞬動きを止めて、それからまた笑った。


「どうしてそんなこと聞くの?」


訳がわからないよ、とハルが言う。

口調こそ優しいが、そこに込められた想いは決して私を良く思ってくれているものではないと直感的に分かった。

それが余計悔しかった、苛立った。


「わけが分からないのは、こっちのセリフだよ!」


私は大きな声で叫んだ。

ハルはぎょっとしてこっちを見た。


__ああ、その顔がむかつく。

私だって、否、私の方が、ハルより遥かにそう思っているのに。


「私の幼なじみと友達が、今日の昼休みに屋上に来たの!

そしたら私が1人でお弁当を食べていたって言った!

私が一人で話していたって言った!

屋上にいたのは私だけだったって、そう言った!

ねえ、これ、どういうこと?」


スッとハルから笑顔が消えた。

眉間にしわを寄せて苦しそうな顔をする。


「もう私、分かんないよ!

ねえ、ハル、どういうこと?」
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