きみに触れられない
ハルは笑顔のまま軽く息を吐くと、いつもと同じような口調で言った。


「幼なじみクンも、お友達も、もちろんみーちゃんも、みんな正しい。誰も嘘なんてついていないよ」


ハルは明るい声で言った。


「だって俺、ユーレイだから」


また今日もここに来たんだねと言うのと同じ言い方だった。


「…へ?」


ハルが言った言葉は突拍子もなくて、反応が遅れた。


「だー、かー、らー、俺はユーレイなんだってば」


ハルが真面目な顔をして言うので、更にどんな反応をすればいいのか分からなかった。


「え、いや、あの、え?」


展開について行けない。

ハルは何を言っている?

そういう冗談ならお断りだが。


「あー、信じてないんでしょー?」


まあそうだよね、とハルは自分をバカにしたような口調で言った。


「これなら信じてくれる?」


そう言ってハルは私の手を握ろうとした。

骨ばった、私よりも大きな手が、私の手を包み込もうとする。

けれどその手は簡単にすり抜けた。

そこにあるのに、触れられない。

私は慌ててハルの顔を見た。

ハルは憂いを帯びた哀しい顔で「ほらね」と笑った。
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