きみに触れられない
「好きなひとが、誰かと両想いになったら…?」

「そしたらもうこの世に未練はないから成仏するよ」

「好きな人が、ハルのことを好きになったら…?」

「俺はユーレイだよ?みーちゃん以外に俺の姿なんて見えないから、そんなこと起きないとおもうけどね」


ハルは笑った。


「俺と両想いになっても、その子は幸せになれない。

俺がいるせいでその子が幸せになれないのなら、俺はその子の目の届かない場所へ、その子の目の前から、この世から、消え失せるよ」


言葉の端々からハルの意志の強さを感じた。

哀しいくらいに、切ないくらいに、その瞳はまっすぐだった。


「…なんでみーちゃんがそんな泣きそうな顔をするのさ」


私には、分からないよ、ハル。

ねえ、どうしてハルは、そんな風に笑っていられるの。

どうしてそんなに強い心を持っていられるの。

本当は自分がその人を幸せにしてあげたいだろうに。

本当は、きっと私が想像できないくらいに悲しくて、悔しくて、怒りさえ覚えるくらいだろうに。


「まあ、そんなわけでユーレイな俺だけど、これからも仲良くしてよ」


ね、と微笑まれた。

目を細めて口角を上げたその笑顔には、まだ少し痛々しさが残る。

ハルはユーレイ。

この世に未練を残した、ユーレイ。


それでも私は差し伸べられた手に戸惑わずに手を伸ばした。

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