きみに触れられない

__言うのを、やめよう。


そんな弱虫な考えが脳をいっぱいにしていく。


けれど、目の前の綾芽ちゃんをもう一度見たとき、そんな考えはどこかへ飛んで行ってしまった。


いつもの綾芽ちゃんは、まるで太陽みたいに明るくて。

こんな私と仲良くしてくれる、心優しい友達で。

笑顔が似合う、サバサバしたカッコイイ女の子。


私の、憧れ。


だからこそ、そんな綾芽ちゃんの辛そうな笑顔は、泣き出しそうな笑顔は、弱弱しい微笑みは、見ていられなかった。


__こんな綾芽ちゃんをこのままになんてしておけない。



私は腹をくくった。



「何かあったら、言って?

私に言えることなら、言って?」


私は綾芽ちゃんの手を握り返した。

綾芽ちゃんははっと顔を上げた。




「…私を、頼って?」




驚いた様子で、目を見開いていた。



__きっと、私なんかにできることなんて、ほとんどない。

けれどそれでも、何か役に立てるはずだって信じたいし、役に立つよう精一杯がんばりたい。


それだけは、どうしても伝えたかった。


私は綾芽ちゃんの味方だよ、って。


それだけでも、伝えたかった。
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