きみに触れられない
私が好きなのは、誰だ?

この人だけは笑顔になってもらいたいって人物は誰だ?


胸に手を当てて、そっと目を閉じる。


私は周りにいてくれるみんなの悲しい笑顔を見てきた。

カナも、綾芽ちゃんも、ハルも、みんな、辛そうに笑っていた。

私に心配かけないようにと笑顔の仮面を張り付けていた。


みんなに笑顔になってほしい。

みんな幸せでいてほしい。


だけど、この人の笑顔をいちばん近くで見ていたいと思うのは。

これからもずっとそばで笑顔を見ていたいと思うのは。


『暇ならちょっと付き合ってよ』


ちょっぴり強引で。


『俺のこと、好きなの?』


平気で人のことをからかって。


『信じて、俺を』


そのくせ、私に勇気をくれた。


『俺がみーちゃんの初めての友達だね』


私の初めての友達。



__ああ、私、ハルが好きなんだ。


それはすっと胸に落ちていくように、妙に納得ができた。


私はゆっくりと目を開けた。

視界に映る景色は何一つ変わらない。

けれど心なしか、世界が鮮やかに見えた。
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