きみに触れられない
次の日、私が家を出るときにカナの家の方を見たけれど、カナの姿はどこにも見当たらなかった。

__まあ、そうだよね。


私はため息を吐いた。


__そりゃあ、告白した次の日にいつもと変わらないように振る舞うなんて、そんなの、酷だよね。


カナの気持ちを考えれば、そんなことすぐに分かることなのに。

それなのに、少し残念で、胸がぎゅっと締め付けられて苦しかった。


教室につくと、いつも通りの朝だった。

机の配置も、昨日の板書が残る黒板も、差し込む朝日の眩しさも、何も変わらない。


私は一つ深呼吸をした。


変わらない教室の空気が、心に落ち着きをくれる気がした。


すると次々にクラスメイト達は登校してきて、どんどん教室が賑やかになる。


「おはよう、奏人!」


クラスメイトのそんな声が聞こえて、問題を解いていた手が止まった。


ドクン、ドクン、と心臓は大きく波打つ。


「ああ、おはよう」


カナの声が耳に届いて、さらに胸は痛みだした。


どうすればいい?

どんな顔で、どんな言葉で接したらいい?


分からなくて、苦しくて、俯く。

シャーペンを握る手にぎゅっと力を入れた。
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