きみに触れられない
突然、奈落の底へと突き落とされたような気分だった。

呆然とした。


__分かってた。

分かっていた、最初から。


誰かが私のことを好きになってくれるはずがないこと。

昨日カナに好きだと言われてからも、こんな私をどうして選んでくれたのかと本当に悩んだ。


暗い思考で、ネガティブで、友達も少なくて、こんなやつ、いいところなんかないって自分がいちばん分かってる。


心から、嫌になるくらいに、分かっているのに。


どうして、こんなに胸が痛いの?


「…まだ、返事はしてないよ…」

「そっか、じゃあ気持ちを伝えたら幸せになれるね!」


幸せそうにくしゃりと目を細めて笑うハルに、必死に口角をあげて微笑み返す。


今、私、ちゃんと、笑えてる?


泣き出しそうになる心を押し殺して笑顔を張り付けた。

呼吸をしたら泣いてしまいそうだから、息は止めていた。


今、心から、綾芽ちゃんの気持ちが分かる。


恋ってもうちょっと楽しいものだと思ってた。

楽しくて、キラキラしてるものだと思ってた。


よく恋は甘酸っぱいだとか甘いけどほろ苦いとか言うけれど、違うね。


辛くて、苦しくて、心が壊れそうなくらい、悲しくてしかたがない。

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