きみに触れられない
ハッと顔をあげると、ニッと笑うカナに驚いた。


「ずっと前からミサが好きだった。

ずっとずっと好きだった。

だから簡単に好きでいることはやめられない。

簡単に終われないけど、ちゃんと気持ちに区切りをつけてみせる。

だからそれまで、ミサを好きでいるのをやめる日まで、


ミサのことを好きでいさせてくれないか?」



爽快な笑顔は、いつも通りで。

けれどその胸に一体どれだけの感情を押し殺しているのだろうと思うと胸が苦しくなった。

カナにそんな思いをしてほしくないのに、そんな思いをさせているのは、紛れもなくこの私で。

カナにそんな思いをさせるくらいなら、いっそカナの目の届かないところへ消えてしまいたいくらいなのに。

それなのに、私は何よりカナと今までと変わらないかかわり方をしたいと願っている。

__ああ、矛盾している。

対極にあるこの願い。


それでも。



「……カナが嫌な思いをしないのなら」



カナの笑顔がなくならないことを、いちばんに思う。



もう、何が正解で不正解なのか、分からない。

いろんな感情が混ざりあって、絡み合って、問題は簡単に解けない。

だけど、何より大切にしたいと思うのは。

『ミサ!』

太陽が大空で輝けること。



「……ミサらしいな」


カナは目を細めて嬉しそうに、どこか安心したような、そんな笑顔を浮かべた。

私はカナに微笑み返した。


きっと、戻れると思った。

きっと、このままでいられると思った。

それが嬉しくて、仕方がなかった。
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