きみに触れられない
「え、でも、それじゃあ…」

何もお詫びにならないのでは。

するとハルは「俺がいいって言ってるからいいの!」とちょっとだけ強い口調で言った。

私は何も言えなくなって「分かったよ」と折れた。

満足そうな顔をしてハルは「そうそう、そういうこと」と言って座り込んだので、その隣に私も座った。


ハルは上を見上げていて、何を見つめているのかと問う間でもなく、何を見ているのかが分かった。


その瞳に空の青を映していた。


すごく、綺麗だった。


「こうやって眺めてるとさ、空に吸い込まれるような心地になるんだよね」


なんだか、分かるような気がした。

空の青が透き通っているから、どこまでも続いているから、このまま空に消えてしまいそうになって、それがちょっと怖くて、ときたま身体が震える。

でも、今はもう。


「吸い込まれてしまってもいいかな」


なんて思ってしまうから。


どんな心地がするんだろう。

オレンジ色の陽を浴びて、青色の空に吸い込まれて、白色の雲と一緒に空を漂ったなら。

楽しいのかな、恐いのかな。それすらも想像がつかない。


__ああ、いっそ空に浮かびたい。漂いたい。

こんな毎日から逃げ出してしまいたい。

苦しみから、悲しみから、もう、全部、全部、全部。


私は俯いた。


「ねえ、またここに来てよ」


突然ハルが言った。
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