きみに触れられない
「どうして断ったりしたんだよ?せっかく幼なじみクンから言ってくれたのに!」

どうしてだよ、と大きな声が反響する。


それはハルらしくない口調だった。

どこにも柔らかさなんて感じられなかった。


__ハルは、怒っているのだろうか。

せっかく自分が応援していたのに、と。

キューピットになるとまで言ったのに、と。


それとも楽しいオモチャがなくなって、つまらなくなると思っただろうか。


私はまた俯いた。



「どうして、断るんだよ。

きっと幸せになれたのに。

絶対、幸せになれたのに」


どうして。


ハルのかすれた声が耳に届く。


__ああ、ハルは怒っている。


それは自分がせっかく応援していたのに、ということではなくて。

楽しいオモチャがなくなる、ということでもなくて。


どうして幸せになれる手をとらなかったかったのかと、嘆いているのだ。


__ああ、ハルはどこまでも優しい。

アドバイスも、笑顔も。


怒る理由さえも。


ねえ、ハルはどうしてそこまで考えてくれるの?

どうして私のことでそんなに感情が揺れ動くの?


ねえ、ハルにとって私はどんな存在?


「どうしてハルは私のことをそんなに気にしてくれるの?」


私にはもう、分からないよ。

解き方さえ、何もかも。
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