きみに触れられない
「え…?」

私は信じられなかった。

だって、ハルが、私のことを、好き?



「好きだよ」



ハルはもう一度言った。

まっすぐで、あたたかい言の葉。



「最初にみーちゃんを見た時から、他とは違うって思った。

すごく…きれいで、輝いて見えた。

それから話してたら優しくて可愛いなって思った。


気付いたら、惚れてた」


それだけ、とハルは言う。


『俺、好きな子がいるんだ』

あの時言っていたのは、私のことだったんだ。

__そんなの、知らなかったよ。


「これ、ずっと言わずにいようと思っていたんだよ。

言うつもりなんてなかったんだ。

言ったところでみーちゃんには届かないし、きっとみーちゃん困るだろうから。

だから忘れて、今のこと全部。

俺はみーちゃんとの関係を変えるつもりもないからね」



ハルはそこまで言うと私に微笑んで、じゃあね、といつものように手を振る。

目を細めて、にっこり笑う。

愛想笑いってすぐに分かるほどの、うさんくさい笑顔。

私を突き放すような、冷たい笑顔。

それから私に背を向けて歩き出した。




「ハル…っ、!」



私も好きだよ、と言おうとした。

だけど言葉を飲み込んだ。
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