きみに触れられない
ハルは「どうしたの?」と振り返る。

穏やかな表情で、腰に手を当てて。

その姿がいつも通りで、涙が溢れた。



__ハル、私、好きだよ。


ハルが好きだよ。


だけど、言えない。


『好きなひとが、誰かと両想いになったら…?』

『そしたらもうこの世に未練はないから成仏するよ』

『好きな人が、ハルのことを好きになったら…?』

『俺と両想いになっても、その子は幸せになれない。
俺がいるせいでその子が幸せになれないのなら、俺はその子の目の届かない場所へ、その子の目の前から、この世から、消え失せるよ』


ハルはユーレイで、好きなひとがいて。

その人が幸せになってほしくて、その姿を見るまでは成仏できない。

それは言葉を返せば、好きな人が誰かと両想いになったら、ハルは成仏してしまうということ。

それにもしハルが好きな人と両想いになったら、消えてしまう。


私がもしハルに好きだと言って、ハルと両想いになったなら。




__ハルが、この世から消えてしまう。











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