きみに触れられない
「え?」

「今日はもう、時間だから」

目を細めてくしゃりと笑う。

その瞬間チャイムが鳴り響いた。

「嘘!」

私は立ち上がった。

「大丈夫。これ、予鈴だから」

あと5分あるよ、とハルはのんきに笑う。

「でも、急いだ方がいいかもね。ここから2年生の教室までは結構距離があるから」

「うん、急ぐ」

「真面目だねえ」とハルは笑う。

「真面目の何が悪いの」とムッとして返事すれば、ハルは「悪いなんて言ってないよ」と言う。

「面白くて可愛くて素敵だなあって」

やっぱりハルはつかめない。

風みたいだと思った。

「さあ、本当に急がないと」

間に合わないよと他人事のようにハルは言う。

「ハルはいかないの?」

するとハルは頷いて「俺はここにいるよ」と言った。

「どうして?」

「サボり?」

やっぱり質問した答えが疑問系で返ってくる。文法的に破綻してるし、なによりサボりだなんて。

私は溜め息を吐いた。

「サボりはよくないと思うけど」

「うん、俺もそう思うけど」

「それならどうして」

今度はハルは何も答えなかった。

「ねえ、またここに来てよ。俺、またみーちゃんと話したいし」

「え?どうして?」

すると彼はキョトンとした。

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