きみに触れられない
5階に着いてエレベーターを降りるとすぐにナースステーションが現れる。

「あら、美咲ちゃん!」

「こんにちは」

知り合いの看護婦さんに挨拶していると、たくさんの人がでてきてくれた。

「美咲ちゃん、久しぶりね!」

「こんなにお姉さんになって!」

幼いときからお父さんの元へ何度も訪れているせいか、5階のナースステーションの看護士さんと医師の先生達とは顔見知りを通り越して、なんだか親戚みたいな関係になっている。

「米山先生に用事?」

「あ、はい!忘れものしちゃったみたいで」

「そう、じゃあすぐに届けに行った方がいいわね」

ナースステーションの看護士さん全員に見送られながら、私はその場を後にした。

ナースステーションの左側は病棟で患者さんが入院していて、右側が医師の先生達がいるところ。

右の方に向かい、角を曲がる。

すぐにお父さんのいる部屋は見つかって部屋の中に入った。

「こんにちはー」

すると部屋の中にいた医師の先生達が嬉しそうな顔で出迎えてくれた。

「美咲ちゃん!」

「お父さんに用事かい?」

私が頷くと「それは残念だ」と先生方は眉をさげた。

「米山先生、今病棟の方で患者さんの様子を見ているんだよ」

「あ、そうなんですか」

「何なら預かっておこうか?」
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