きみに触れられない
そっと部屋の中を覗いてみると、そこは4人部屋だった。

けれどその中にいるのはたった1人だけだった。

その人の顔を見た瞬間、私は固まった。


「どう、して」


どうして、きみがいるの。



そこにいたのはハルだった。


ハルが目を閉じてベッドで寝ている。



どうして。

どうしてハルがこんなところにいるの。

どうしてこの病院で入院なんかしているの。

ハルはユーレイだって言っていたじゃないか。

この世を彷徨うんだって言っていたじゃないか。


それなのに、どうして。


私はさっぱり分からなかった。


それともこれはハルじゃなくて、誰かとても顔が良く似ている人物なのかもしれない。

そう思いこもうとしても、左目の下にある黒子の位置がハルと完全に一致している。

とても別人だと思うことはできなかった。


私はベッドの傍にくるとかがんでハルの顔をよく見た。


やすらかに寝ている。

上下する胸が生きていることを伝えるけれど、まるで起きる気配のない様子はまるでお人形さんのようだった。
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