きみに触れられない
「美咲?」
廊下からお父さんの声が聞こえてパッとハルから手を放して顔を上げる。
「どうしたんだ?こんなところで」
お父さんは慌てて病室に駆け込んでくる。
白衣を着たお父さんは何だか別人のようだけど、それでもかっこよくて仕方がない。
こうなりたいと思ってしまう。
「ああ、お父さんに用事があったんだよ。忘れ物を届けに来たの」
はい、これ。そう言って茶封筒を手渡すと、お父さんは「ああ、ごめん。ありがとう」と微笑んだ。
「あと、これも」
紙箱を手渡すと、お父さんは首を傾げた。
「これは?」
「チョコレートだよ」
お父さんはますます訳が分からないと言う顔をした。
「お母さんが、甘い物でも食べて疲れを取ってもらわないとね、だって。無茶しないようにってさ」
するとお父さんはとても優しい顔をして「ああ、分かったよ」と言った。
その顔を見ているとお母さんがとても好きだと、愛しいと、口にしなくても充分に伝わってきた。
ああ、やっぱりこの夫婦の娘で良かったと思った。
お母さんがお父さんを愛しているのと同じくらいに、お父さんもお母さんを愛していて。
そして二人はきっとその言葉を言い合えることができる。
そう思うと少し羨ましかった。
私にはできないことだから。
「それでミサはなんで彼の病室で泣いてるんだ?」
ドキッとした。
廊下からお父さんの声が聞こえてパッとハルから手を放して顔を上げる。
「どうしたんだ?こんなところで」
お父さんは慌てて病室に駆け込んでくる。
白衣を着たお父さんは何だか別人のようだけど、それでもかっこよくて仕方がない。
こうなりたいと思ってしまう。
「ああ、お父さんに用事があったんだよ。忘れ物を届けに来たの」
はい、これ。そう言って茶封筒を手渡すと、お父さんは「ああ、ごめん。ありがとう」と微笑んだ。
「あと、これも」
紙箱を手渡すと、お父さんは首を傾げた。
「これは?」
「チョコレートだよ」
お父さんはますます訳が分からないと言う顔をした。
「お母さんが、甘い物でも食べて疲れを取ってもらわないとね、だって。無茶しないようにってさ」
するとお父さんはとても優しい顔をして「ああ、分かったよ」と言った。
その顔を見ているとお母さんがとても好きだと、愛しいと、口にしなくても充分に伝わってきた。
ああ、やっぱりこの夫婦の娘で良かったと思った。
お母さんがお父さんを愛しているのと同じくらいに、お父さんもお母さんを愛していて。
そして二人はきっとその言葉を言い合えることができる。
そう思うと少し羨ましかった。
私にはできないことだから。
「それでミサはなんで彼の病室で泣いてるんだ?」
ドキッとした。