きみに触れられない
「え、友達じゃないの?」

さも当然と言わんばかりに、彼はそんなことを言う。


__友達、なのだろうか。

ハルにとって、私はそういう存在なのだろうか。

でも、ハルが友達だと思ってくれているのなら、私にとってもハルは友達なわけで。

そこまで考えて心が震えた。

大して話もしていないのに、しかも、こんな私に。


友達ができた、なんて。


「友達だって言われたの、初めてで」


思わず、戸惑ってしまうの。


ずっと憧れてた。

幼馴染とは違う、クラスメイトとも違う、もっと別の関係。

それが今、目の前に。


「それなら、俺がみーちゃんの初めての友達だね」


ハルは目を細めて楽しそうに笑った。

本当に楽しそうに、笑った。


「授業開始までもうあと3分だよ。本当に急いで。遅刻したくないんでしょう?」

そう言われて腕時計を見ると、確かに長い針が授業開始まであと3分のろころを指していた。


「ごめん、私もう行くね!」


言うが早いか私は屋上を飛び出して階段をかけ下りる。


脳裏には最後に見たハルの笑顔が焼き付いていた。


胸がギュッとした。


嬉しくて、嬉しくて。

遅刻しそうで大変だというのに、心臓は高鳴っていた。
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