きみに触れられない
私は拳を握りしめて顔を上げた。


「…待っているだけじゃ、だめだ」


私が会いたいんだ。

会いに来てもらうんじゃない。



私が会いにいくんだ。



私は屋上から飛び出した。

階段も駆け下りて、廊下を走る。


正直屋上でしかハルと会ったことがないから、屋上以外にどこにハルがいるのか分からない。

それでもハルに会いたい一心で走り回った。


図書室、美術室、音楽室、ハルがいるかもしれない場所を回るけれど、どこにもハルの姿はなかった。

ハル、どこにいるの。

息が切れて肺が痛くなるくらいに走るけれど、どこにもハルはいない。


どこに行けば会える?

今は使われていない旧教室?それとも理科室?

見ていない場所はどこ?


肩で息をしながら必死に考えてもハルがいる場所は分からない。

それでも走るしかないと思ってもう一度走りだして旧教室に向かおうと階段を駆け下りたときだった。


__キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴り響いた。

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