きみに触れられない
「綾芽ちゃん…」

「だからあたしを頼ってよ」

綾芽ちゃんは私の手を握った。

「あたしはミサの友達なんだから」

私は綾芽ちゃんの手を握って頷いた。

「ありがとう」

綾芽ちゃんになら言えるかもしれない。

「あのね…」

打ち明けようとした、その時だった。

「なあ、聞いたか、奏人!」

隣のクラスの人が入ってきてカナに話しかける。

「蓮(れん)、どうしたんだよ?」

「どうしたもこうしたもねーよ!」

蓮という、いきなり入ってきた隣のクラスの人はカナの机をバンと叩いた。


「先輩たちがみんな騒いでる!

…先輩が、やばいって」


カナは顔色を変えて立ち上がった。

「嘘、だろ」

蓮という人物の肩を掴んで、カナは怒鳴るように叫ぶ。


「嘘だろ、なあ、嘘だろ!?」

「落ち着けよ、奏人!」

クラスメイトの一人がカナを抑える。

それはサッカー部の人で、おそらく蓮という人物もサッカー部なのだろう思った。

私はカナのこんな姿を見たのが初めてで、ただ茫然としていた。

私だけじゃない、クラスのみんながカナに注目していた。
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