きみに触れられない
とても課題プリントの問題を解くことに集中できなかった。

カナが気になってしかたなかった。


今、カナはどんな気持ちでいるのだろう。


私を照らしてくれた太陽は今雲の中にいる。

私にはそれを吹き飛ばせるか分からない。

それでも、何とかしたいと思った。


カナがいつものように笑えるために。


けれど私にはその方法が分からなかった。

考えても、考えても、解決策は何一つ浮かばない。


はあ、とため息を吐いてうつむいた。


そのとき、視界の端にみんなの様子が移った。

クラスのみんなも問題を解きながら、たまにカナを見ていた。

みんな、気になってしかたがないのだろう。


カナは太陽だ。

いつも私を照らしてくれた太陽だ。

だけどそれは私だけじゃない、みんなにとってもそうだったのだと初めて気づいた。


太陽が空で輝けば、照らされた大地は芽吹き恵みをもたらすだろう。

しかし雲に隠れてしまったら、照らす存在を失ってしまったら、大地は光を失って暗い闇が訪れる。

カナはそういう存在なのだ。


カナはその時間、俯いたまま少しも動かなかった。

重い沈黙に包まれたまま、5限目は終了した。
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