きみに触れられない
慌てて教室に駆け込むと、授業時間はすでに2分過ぎていたけれど、まだ先生は来ていないらしい。

助かった、と息を整えながら席につく。

カナがとても心配そうに私を見ていた。


「…珍しいな」


絞り出した声に、たった6文字の音に、一体どれだけの想いが込められているのだろう。

きっと私が想像できないほど、迷惑をかけた。心配させた。

「ごめんね、大丈夫だから」

カナは何か言おうとしたが、その瞬間、先生が遅れて入ってきた。

「遅れてすまないね」と小さく折り畳んだハンカチで汗を拭き取っている。

「さあ、授業を始めよう」

「起立」と学級委員が言って、授業が始まる。

私は慌てて教科書やらノートを取り出した。

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