きみに触れられない
「ハル、ハル!」

体育館も、校舎裏も、実験室も、旧教室も、ありとあらゆることろを必死に探すけれど、どこにもハルの姿なんてない。

走りすぎて、息が切れる。

日頃の運動不足がたたって体のあちこちが筋肉痛で痛い。

翌日どころか、まさかこんなに早く筋肉痛になるなんて。

運動音痴で運動不足な自分を少し恨みながらも、少し休憩しなければと足を止めた。

しゃがみこんで、酸素の回らない頭で必死に考える。


どこにいる?

ハルは今どこにいる?


でも、もう、どこにもハルがいそうな場所なんてない。


__もう、どこに行っても、どこを探しても、ハルには会えないんじゃないか。


そう思ったら、立ち上がる気力なんてなくなってしまった。

床に座り込んで、体育館座りをする。

膝を閉じた瞳に押し付けた。


__ハルに会いたい。

ハルに、会いたい。


私は今までハルの何を見てきたのだろう。

ハルの何を知っていたのだろう。

私がハルとのかかわりの中で知ったことは何もなかった。

過去も、本名も、ハルは教えてはくれなかった。

ユーレイなことも、聞くまで教えてくれなかった。

ああ、私はハルの何も知らなかったんだ。
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